AWS環境のセキュリティ診断において、実際の攻撃シナリオを再現し、脆弱性を洗い出すことは重要です。AWS Pacuは、そのための便利なツールの一つです。
本記事では、AWS Pacuの基本的な使い方やインストール方法、モジュールの実行方法を詳しく解説します。さらに、AWS GuardDutyとの比較や検知の限界についても触れ、AWS環境の診断を行う際のポイントを紹介します。
対象とする人
- AWS環境のセキュリティ対策を強化したいエンジニア
- セキュリティ診断の実践に興味がある方
- Pacuを使って攻撃シナリオをシミュレーションしたい方
やること
- Pacuの概要とインストール方法を学ぶ
- 各種モジュールを使った情報収集や攻撃のシミュレーションを実施
- AWS GuardDutyとの併用によるセキュリティ強化の方法を紹介
Pacuとは
概要
Pacuは、AWS環境のセキュリティ診断を行うためのオープンソースツールです。ペンテストやレッドチーム活動に使用され、攻撃者の視点からAWS環境の脆弱性を発見するために設計されています。Pacuを使用すると、AWSのリソースに対する列挙や、任意コードの実行、永続化など、様々な攻撃シナリオをシミュレーションできます。
- AWS Pacuは、AWS環境を診断・ペンテストするためのオープンソースツールです。
- Pacuの使用により、セキュリティ上の弱点を攻撃者視点で見つけることができます。
- AWS GuardDutyと併用することで、より強固なセキュリティ対策が可能です。
インストールと設定
- 前提条件:
- Python 3.7以上
- AWS CLIのインストールと設定済み
- Pacuのインストール手順
git clone https://github.com/RhinoSecurityLabs/pacu.git cd pacu pip install -r requirements.txt
- 設定
AWSの認証情報を設定して、PacuがAWS環境にアクセスできるようにします。aws configure
Pacuの使用方法
攻撃用モジュール一覧
Pacuは、様々な攻撃シナリオを実行できるモジュールを提供しています。以下はその一部です。
偵察(Reconnaissance)
acm__enum
: ACM証明書を列挙する。aws__enum_account
: AWSアカウントの基本情報を取得する。ec2__download_userdata
: EC2インスタンスのユーザーデータをダウンロードする。iam__enum_users_roles_policies_groups
: IAMユーザー、ロール、ポリシー、グループを列挙する。
権限昇格(Privilege Escalation)
iam__privesc_scan
: 権限昇格の可能性をスキャンする。cfn__resource_injection
: CloudFormationテンプレートを使ったリソースのインジェクションを試みる。
モジュールの実行
各モジュールは簡単なコマンドで実行できます。例えば、IAM情報を列挙するには以下のコマンドを使います。
run iam__enum_users_roles_policies_groups
実行後、結果はPacuの内部データベースに保存され、後から参照することが可能です。
AWS GuardDuty
概要
AWS GuardDutyは、AWSが提供するマネージドの脅威検出サービスです。異常なAPIコールや、潜在的な不正アクセスをリアルタイムで検知します。GuardDutyは、Pacuでシミュレーションされた攻撃に対する検知能力を持ち、Pacuと組み合わせて使用することで、診断と防御の両面からセキュリティを強化できます。
検知できる脅威一覧
- 不正なAPIコール
- IAM認証情報の不正使用
- S3バケットへの異常アクセス
Pacu VS GuardDuty
Pacuは攻撃者視点での診断ツールであり、AWS環境の脆弱性を見つけるために使用されます。一方で、GuardDutyは防御側のツールであり、異常な動作や攻撃をリアルタイムで検知します。これらを併用することで、攻撃のシミュレーションとその対策を一連の流れで確認することが可能です。
実験結果
実際にPacuの各種モジュールを実行し、GuardDutyでの検知結果を確認したところ、多くの攻撃手法がGuardDutyにより検知されました。例えば、iam__privesc_scan
による権限昇格試行は、GuardDutyによって警告が発せられました。しかし、すべての攻撃が検知されるわけではなく、細かい調整や設定が必要です。
まとめ
Pacuを利用することで、AWS環境のセキュリティ診断をより効率的に行うことができます。特に、実際の攻撃シナリオをシミュレーションすることで、環境内の潜在的な脆弱性を早期に発見できます。加えて、GuardDutyを併用することで、攻撃への対応力も向上します。クラウド環境のセキュリティを強化するためには、PacuとGuardDutyを組み合わせた総合的なアプローチが重要です。